2:http://cp.rdy.jp/2007/02/post_692.html

たとえば、メディアは、経営上繋ぎ融資を受けたりするので、銀行の批判はできないような仕組みになっている。銀行の扱う商品は「お金」だ。われわれは、「お金」についてなにを知っているだろう。陰謀理論を批判するには、最低限こういう現実を知った上で、批判しなければ、手ごわい陰謀理論はびくともしないし、批判する側もチンピラみたいな陰謀理論を相手にしているだけでは、見ていて歯がゆい。確かに、どう関与していくかという問いには陰謀論は非常に弱い。せいぜいのところ、原因を外部に求めて、原因を除去するために、自己と他者の境界を明確化するだけの作業だ。しかし、それとて、ひとつの見立てとして考えれば、読み物としては面白いし、政治・経済の話だから、ものごとを多面的に見て、相対化する視座としては興味深い。少なくとも通説だけではなく、余裕のあるひとは有力説、少数説にも気を配る。毛嫌いするひとに限って、歴史観も単線的で、そもそも、ユダヤ人問題と聞いただけで、パニックに陥って思考停止になるようではだめだと思う。陰謀理論に囚われてしまってはだめだが、彼らの主張の根源に目を向けるのは、決して無駄ではない。西欧を深く理解するにはここを避けていてはだめだ。哲学にせよ、経済学にせよ、いままでの学問は、学説紹介で終わっているという批判があって、時代は、そういう批判を乗り越えることを要請している。志のある若いひとは、陰謀理論にラベルを貼って忌避するのではなく、正面からぶつかってほしいと思う。というわけで、たとえば、つぎのような主張をどう咀嚼すればいいのだろうか。総論では陰謀理論と距離を保てるが、こういう各論でつまずいてしまう。手ごわい陰謀理論のもつ各論の具体性が放つ圧倒的な説得力を跳ね返す力がない。

信用創造に仕掛けられた何重にもわたるトリックについて。

中央銀行信用創造をコントロールすることで、各業種毎の消費の増減、資産バブル、景気コントロールを行うことが出来ます。

中央銀行信用創造
一般人に対しては

信用創造という言葉の意味を出来るだけ伝えない。
信用創造が起きるのは、預金時ではなく、銀行が貸し出した時であることを伝えない(銀行貸出を行うことで同額の預金をB/S上で同時に作り出す。)
◎銀行貸し出しがもたらす影響力について伝えない。各業種に対して銀行貸し出しが増減することが、各業種毎の消費の増減につながることを伝えない。

また、専門家に対しては

◎銀行貸し出しの指数よりも、他の指数を重視させる。(代表的な景気動向指数に銀行貸し出しが入っていない。)
金利の操作で信用創造をコントロールできると思わせる。(マネーに対する需給関係を一般物と同等に考えている。実際は需要過多、供給過小であり、銀行有利の割り当て市場である。)
◎銀行貸出ではなく預金額を重視させる。

のように説明します。

信用創造機能とは?
 
信用創造機能のおさらいをしましょう。二つの説明方法があります。
準備金を10%とし、あなたが預けた現金100円がどうなるかで見ていきましょう。

[説明1] (教科書の説明)
100円の内10%の10円を日銀当座預金に準備金として預け、90円が貸出に回ります。この90円は長い目で見るとどこかの銀行に預金されるでしょう。再びこの90円のうち9円が準備金として日銀当座預金にプールされ81円が貸出されます。

これが無限に行われたとして
預金総額:100+90+81+72.9+65.61+・・・=1000円になります。
あら不思議、現金100円が1000円の預金総額に変わりました。

一般式にすると
[元出100円]÷[準備金10%]=[預金総額1000円]
これが信用創造機能の非常に疲れる説明です・・・。

[説明2](実際の信用創造
銀行はあなたの預金100円を準備金として日銀当座へ預ける(貸出す)ことで市中に最大900円まで貸出しすることが出来ます。つまりあなたの預金100円を合計1000円の貸出に変えることが可能です。

[説明1](教科書の説明)では貨幣乗数などのトリックを用いて、預金の範囲内でしか銀行貸し出しが出来ないように錯覚させます。

預金があり、銀行貸出が行われるようにイメージさせるため、預金を重視させ、銀行貸し出しがもたらす影響力を軽視させます。

しかし実際は、[説明2](実際の信用創造)のように100円を基に単行で900円を貸し出すことが出来ます。銀行貸出の預金に対する依存度が[説明1](教科書の説明)とは大きく異なり軽微です。預金の影響力は弱まり、銀行貸出の影響力が強くなります。しかも日銀当座預金に入れる資金は預金でなくても良く、短期コールレート(※)等から仕入れても良いのです。

[説明1](教科書の説明)では、マネタリーベースの拡大を行えば銀行の手持ちの預金が増え、銀行貸し出しが増加するという錯角を与えてしまいます。

(従来のマネタリズムは、預金量をコントロールすることで景気をコントロールできると考えてきました。ところが近年はマネーの量(供給量×流通速度)とGDPの関係が安定しなくなっています。

しかし、預金ではなく貸出によって作られる信用を基に、GDP取引と非GDP取引(株や不動産の取引)に分解して調べてみると、GDPに含まれる取引の流通速度はほぼ一定です。流通速度が安定しなくなった理由は、非GDP取引の増加にあります。預金を見ていては貸出先がわからないので、各業種毎に分解することが出来ません。つまり銀行貸出の各業種に対する影響力をから、目を逸らさせるための煙幕として預金を見るマネタリズムは利用されているのです。)

※ コールレート
コールは主として銀行などが短期資金のやりくりに利用する資金で、その際に適用される金利コールレート

  
マネーの作られ方の前後関係の錯覚

×マネタリーベースの増減→マネーサプライの伸び率の増減(従来の教科書の説明)
○マネーサプライの伸び率の増減→マネタリーベースの増減

多くの場合マネタリーベース(※)の増減がマネーサプライ(※)の伸び率の増減を作り出すのではなく、マネーサプライの伸び率の増減がマネタリーベースを拡大させます。市場のマネーサプライの拡大は、銀行貸し出しという信用創造によってなされます。マネーサプライの拡大がなされた後、銀行はその準備預金分を日銀当座預金に預ける流れ(マネタリーベースの増加)が一般的です。

マネタリーベースの拡大が、市場のマネーサプライを拡大させる1つの原因ではあっても、十分条件ではありません。十分条件でない以上、マネタリーベースの拡大が市場のマネーサプライの拡大につながるかはその時の状況によります。(日銀の量的緩和が行われても、キャピタルクランチの状況にあった銀行は貸出を増加させなかった)

ただし、信用創造を行う銀行貸し出しは、マネーサプライ拡大の十分条件であり、どのような時でも市場のマネーサプライを増加させます。ゆえに、銀行貸し出しの減少の結果もたらされるデフレ時では、マネタリーベースの拡大を行っても効果の無いとき、民間に対して信用創造が行えるように政府や中央銀行が対処するべきなのです。

※ マネタリーベース
日銀が民間金融機関に供給するマネー量のこと。
現金通貨と日銀当座預金残高を合計したもの。民間の金融機関を通じて、マネタリーベースが信用創造により何倍ものマネーサプライを創造することになる。そうしたことから、マネタリーベースはハイパワードマネー(高馬力のお金)という言い方もされる。

※ マネーサプライ
マネーサプライとは、世の中に出回るマネーの量のこと。
日銀は民間金融機関に資金を供給し、民間金融機関はそうした資金などを元に信用創造をして、世の中に出回るマネーを増やす役割を果たす